山梨県は樹を見に行く以外にも、ドライブがてらに良く出かける。
エンジンオイルを換えたあとなどは、年甲斐もなく笹子峠の旧道を攻めてみたりする。東京側から登ると、サミットの少し手前のヘアピンの袂に矢立スギの案内板が立っている。駐車スペースもあるので安心してスギに訪問できるのは有り難い。
そこから急坂を下ると5分ほどのところに、正真正銘の中仙道がひっそりと出迎えてくれる。安藤広重によって書かれたスギも、この矢立のスギであるという。広重の描いたスギは健全な姿で立っているが、現在の姿は上半身がもぎ取られ、火災の影響で完全に中空のままで立っている。表現は悪いが、寸詰まりの典型のようなスギである。
心配される樹勢であるが、その大きな空洞をものともせず、これでもかといわんばかりの繁茂ぶりである。
付近には東屋風の休憩所も設けられ、旧道散策の方々の憩いの場所として活用されているようだ。
現状を見て心配されるのが、下を笹子川が流れる急な崖上にあるため、大雨の際などに地滑りなどが起こると、この樹もろとも流れ落ちる可能性が大きそうな点。笹子トンネルができ、人間の活動域から離れホッとしているスギにとっては、唯一の心配の種であろうか。
広重も訪れたこの地。同じ土を踏みしめ、同じ樹を見つめ、自分をそんな歴史の中へ誘うのも、たまにはいいではないか。
※1 環境省調査による