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北海道から九州まで、ほとんど全国的にイチョウの木を見ることが出来、もっともポピュラーな木の代表ともいえるイチョウ。しかし、一方では生きている化石ともいわれ、地球上にたった一族一種の貴重な植物でもあるのです。 オハツキイチョウはイチョウの変種で、葉の上に実を結ぶ、または葉上に葯を付けるイチョウのことをいい、全国に約20本ほどの存在が知られています。また、イタリアの植物園にも1本ですが、オハツキイチョウの報告があります。
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上の写真は山梨県身延町、本国寺のオハツキイチョウのサンプル。右は同じく身延町上沢寺のオハツキイチョウの結実前の葉の状態。中央とやや左上とに2ヶ所、オハツキとして成長する過程の葉が見えています。 基本的には結実するということから、雌株がその大部分を占めていますが、2株のみ、雄株の報告もあります。山梨県身延町八木沢にあるイチョウと、三珠町にあるイチョウがそうです。特に八木沢のオハツキイチョウは世界にも紹介され、国内に於いても国の天然記念物にも指定されるほど、貴重な存在でもあります。 |
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上沢寺のオハツキイチョウ 山梨県南巨摩郡身延町下山 上沢寺 幹周 6.8m |
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下山常福寺のオハツキイチョウ 山梨県南巨摩郡身延町下山 常福寺 幹周 4.65m 寺が火災に遭ったときに、幹の一部にまで延焼し、今でもその痕跡を見ることが出来ます。しかし樹勢はすこぶる旺盛で、よく枝葉を伸ばしており、影響は今では見ることが出来ないくらいに回復しているようです。普通のオハツキイチョウは、実が小さいのが普通なのですが、この木の実はかなり大きい実がなるとのことです。木は小振りではありますが、両隣にある本国寺や上沢寺と同じく、樹齢は700年とされており、同時期に植裁されたものとされています。直接手で触れることの出来る、貴重なオハツキイチョウの古木の一本です。
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下山本国寺のオハツキイチョウ 山梨県南巨摩郡身延町 本国寺 幹周 5.3m 本国寺山門脇にそびえるオハツキイチョウの巨木です。樹勢も旺盛で、樹下に入ると薄暗いくらいの繁茂ぶりを示します。私が訪問した日は、住職さん自らオハツキイチョウについて解説してくださり、本堂にあるオハツキイチョウ関連の資料なども見させていただきました。境内は住職さん自ら植えたという花にあふれ、心和ませてくれる寺院です。 |
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八木沢のオハツキイチョウ 山梨県南巨摩郡身延町八木沢国指定天然記念物 幹周 3.00m 大変珍しい雄のオハツキイチョウです。この木は明治29年4月17日、藤井健次郎博士により発見され、広く欧米の植物学会に紹介された木でもあります。数少ない雄のオハツキイチョウということで、昭和15年7月に国指定の天然記念物として指定されています。山梨県の身延地域にオハツキイチョウが集中して多い原因として、この木の花粉が富士川を渡り、対岸の上沢寺や本国寺、長谷観音などのイチョウと受精し、オハツキイチョウとして成長させているのではないだろうかとも言われているほどで、この木の影響力は、計り知れないものがありそうです。
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長谷寺のオハツキイチョウ 山梨県南巨摩郡身延町下山 長谷寺 幹周 4.2m 最近になって急激に樹勢が衰え、樹木医の手によって土の入れ替え、施肥、枯れ枝の除去などにより樹勢回復が計られました。山の中の静かなところにあるオハツキイチョウで、環境は抜群であるのに、なぜか樹勢に冴えがありません。数少ない貴重なオハツキイチョウであるため、是非とも回復を願いたいところです。
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早田のオハツキイチョウ 山形県西田川郡温海町大字早田 幹周 3.3m 小振りな木であるが、実の付き方がもっとも変化に富んだ木の一本です。山の中にありますが、手入れが隅々まで行き届き、地域住民の手厚い保護状況が伝わってきて嬉しい限りであります。
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稲田禅房のオハツキイチョウ 茨城県笠間市 西念寺境内 幹周 7.5m 伝承によると、明治4年に火災に遭ったとの伝えがあるが、現在はその痕跡さえ分からないほどに回復しており、樹勢は非常に良好のようです。関東地方では数少ないオハツキイチョウの一本であり、また全国的に見ても、最大クラスのオハツキイチョウの一本といえるのではないでしょうか。
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