東根の大ケヤキ(国指定特別天然記念物)


山形県東根市東根小学校、ここに日本最大といわれるケヤキがあります。幹の周囲は15.7m、樹高は26m、樹齢は1000年以上と言い伝えられており、大正15年国指定天然記念物、昭和32年には他に比類なきケヤキという理由によりケヤキでは唯一の特別天然記念物の指定を受けています。東根の大ケヤキは今でこそ東根小学校の校庭に位置していますが、かつては南北朝時代の正平二年(1347)に、小田島長義が築いた東根城の本丸跡にあたり、東根市内を見下ろすことが出来る小高い丘の上に位置しています。市街地とはいえ、生育環境は申し分ないと言ってもいいでしょう。
古くより山梨県の「三恵の大ゲヤキ」、群馬県の「原町の大ゲヤキ」とともに、三大ケヤキと呼ばれ、全国にその名を知られていましたが、東根の大ケヤキ以外の2本は現在では痛みが激しく、半身を失ったような状態で、往年の面影もないほどに傷んでしまっています。全国に目を移してみても、ここ十数年で、国の天然記念物に指定されていたケヤキの巨樹が、相次いで四本も姿を消していっているのが現状です。その他の指定木についても、枯死寸前の状態のものがその大多数を占めており、今現在のケヤキのおかれている実状を如実に物語っています。


松食い虫の被害により、著名なマツがその姿を消してしまったように、次はニレ科、特にケヤキ、エノキ、ムク等が最も心配される樹種のようであり、一日も早い保護対策が待たれるところであります。このように衰退の激しいケヤキの巨樹たちの中にあって、一人気を吐いているのが、この東根の大ケヤキなのです。
ケヤキは古くはツキ(槻)とも呼ばれ、語源はけやけき木、つまりきわだった素晴らしい木ということを表しており、ほうきを逆さにしたような樹形が特徴です。樹高も高いものでは50mに達しようかというものも見受けられ、スギやクスなどと並び長寿を誇る樹種とされています。樹齢千年以上と伝えられるものも数多く、その中でも東根の大ケヤキは、日本を代表するケヤキの横綱とも言っても過言ではないでしょう。ケヤキの分布は、本州から四国、九州にかけて広範囲におよび、全国各地に巨樹が見られますが、特に東日本に偏った分布の傾向を示しており、関東一帯には巨樹も多く、屋敷林として残っている大木も少なくありません。特に武蔵野の風景には、なくてはならない樹木の一つに数えられ、実際に埼玉県は、ケヤキを県木として指定しています。

 

東根の大ケヤキはとにかく大きい。今までみてきたケヤキとは次元が違う。同じケヤキの中でこの一本のみが違った世界にいるかのようである。これがこの木と初めての対面時の印象であり、ここまで強烈なインパクトを与えてくれる巨樹もそうざらにあるものではないだろう。その幹は東西方向に長く、南北方向に人が通り抜けられるほどの空洞が口を開けており、よく見ると古くに火災にあった痕跡が認められるが、樹勢にはほとんど影響はしていないようである。地上5m付近から二本に分かれた幹はその形状から一本の欅ではなく、二本が合体して成長して行ったものかもしれない。

明治初期までは20mばかり離れたところに雄槻と呼ばれるもう一本の大ケヤキが存在していたのであるが、残念ながら現在ではもう見ることが出来ない。何とも残念である。 

「おはようございます」。登校してきた子供から挨拶の声をかけられ、いつの間にか2時間以上もの間、撮影に没頭していたことに気づく。しかし、東根小学校の生徒たちはなんと幸せなことであろうか。春夏秋冬、雨の日も晴れた日もこの日本一のケヤキを見ながら育つのであるから。一生涯、心の中に大ケヤキを植えつけながら生きていくのであり、何物にも代え難い、将来への最高の思い出となるのではないだろうか。

 


  
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