大崩沢のトチノキの情報を得て現地へと向かったが、真新しい公共の温泉があるのみでトチノキの姿はどこにもない。所在を従業員の方に聞いてみると、対岸の渡原に大きなトチがあるという。
さっそく渡原へと向かったのはいうまでもない。
対岸の大崩沢が名前の通りガレ場に近い状態であるのに対し、渡原はとても湿潤なしっとりとした空気の場所であった。
山中にあるものと決め込んでいたのだが、実際には人家の近くにあり労せずに行けたのは幸いであった。トチノキに最も近い家の奥さんが木の根元まで案内してくださり、大変恐縮してしまった。
トチノキは緩やかな斜面に立っており、樹の周囲の樹は伐採してあるが、ほぼ自然のままの状態に保たれている。根元付近の土壌は常に水を含んだ湿地帯のようでもあった。
根元には無数のトチの実が落ちており、実際撮影中にも絶え間なく上から落ちてくるので気が気ではない撮影であった。
ここまで健全なトチの巨樹は珍しく、渡原がいかに自然豊かな地であるか知れるであろうか。
帰り際にお礼の挨拶をしに行くと、カボチャのお土産までいただいてしまった。現在ではわずか三軒が残るのみの集落渡原。いつまでも忘れられない樹と集落となった。
何時までもこの豊かな自然とともに残ってほしい集落であった。