かつての秩父郡大滝村、現在は合併して秩父市の一部となった大滝村。雁坂トンネルが出来てからは、かなり交通の便がよくなり、秘境のイメージは薄れた。
しかし、雁坂トンネルへ向かう国道140号線から別れ、中津川渓谷方面へ向かうと道はかなり整備されたとはいえ、かつての大滝村のイメージが蘇ってくる。
仙峡の大トチは中津川に向かう途中、道の真ん中に忽然とその姿を現す。本当にいきなりの登場で、木に関心のない方でも「あんだってか!」(秩父弁)になることは間違いなしである。
トチノキはかつて中津川右岸の急斜面にあったのだろうと想像され、道路が埋め立てして通されたため、幹の高さ3m付近を道路が通ることになってしまった。普通であれば完全に伐採される所であろうが、このトチノキは残った。
道幅を広く取り中央分離帯を儲け、トチノキの周囲だけは埋め立てせずに空間を空けて残し、まさに道路の真ん中から「にょきり」と顔を覗かせているのだ。
現在のところ、道路が通った事による深刻な影響は見られないようで、意外なほど元気な姿を見せてくれる。
四国の香川にも同じような境遇のスギがあるが、何れも並外れた強運の持ち主なのであろう。
人間が伐採せずに残した木、それなりの理由はきっとあるはずだ。それに応えて、これからも元気に生き続けてほしいものだ。