1993年、同じ香川県にある岡の松が松食い虫の被害によって枯死してからは、円通寺のマツが日本一の松として全国にその名を知られていた。私の二度目の訪問となった97年7月時、樹勢は旺盛のように見えたが、根元付近の樹皮を見ると数ヶ所剥がれかけたところがあり、ボロボロと崩れかけている状態であった。どうやらマツノザイゼンチュウが侵入しているようだと思い、残念ながらこれが最後の訪問となるのであろうか?などと考えながらの撮影であった。
撮影に熱中していると、どこからか小さい子犬が現れ足にまとわりついて離れようとしない。何処へ行くにもついてくる。コロッとした黒い子犬で、かつぎ上げると顔をペロペロとなめてくる。結局犬とともに長時間の撮影を済まし、つらい別れの時がやってきた。車に乗っても後ろを走ってついてくるのであった。今考えると、大げさな話であるが、マツが犬を通して助けを求めていたのかもしれないなどと考えてみたりする。こちらも樹木医会などに連絡するくらいはできたはずである。何もしなかった自分が少々悔やまれるのだ。何となく心残りのするマツとの別れであったのを思い出す。
その4年後、円通寺のクロマツがやられたとの連絡を受け、当たってはほしくない予想が悪い方に転んだと落胆したのだった。
私の中ではもっとも好ましいマツの一本であっただけに、非常に残念だ。今後一生脳裏から離れないマツの名木中の名木である。
※1 環境省資料による