ブリッスルコーンパイン


すばらし青空!
ビッグパインという小さな町をすぎると、行き交う車も無い。インヨー国有林の入り口に、1913年ルーズベルト大統領が道路完成式で植えたジャイアントセコイアが美しい姿を現す。インフォメーションの建物はあっても、人影はなく、この木が私たちを迎えてくれた。ここから草原の中を公園道路は左に折れて登っていく。

静かな澄み渡った日だった。
2003年9月初め、レンタカーで世界最長寿の木に会いに行った。
シエラネバダ山脈の東側ホワイトマウンティン(4340m)の3000m以上にブリッスルコーンパインは生息している。4700才以上の木もあり、その樹齢が学者により実測されている。過酷な環境に生き続ける、このブリッスルコーンパインを、私自身の眼で見られる時が近づいていた。

公園道路は時々、シエラネバダ山脈の姿を現しながら相変わらず高度を上げていく。
あっ! 油圧計の警告ランプがついている!
エンジンを止めた。しばらくしてエンジンを掛けることを繰り返した。
やっと現れた後続のワゴン車を止め、見てもらう。目的地のシュールマングローブはもう近いと聞き、心配しつつも、前進した。
駐車場には数台の車があった。子供たちがベンチでレンジャーの説明を受けていた。案内所で入園料を支払い、どのコースで最長寿のブリッスルコーンパイン(メスーゼラと名付けられた)に会えるか尋ねた。メスーゼラウォークを奨められる。でも、正確な場所はメスーゼラ保護のため秘せられている。青空に薄雲があらわれ、紫外線をさえぎり、涼しい風が心地よかった。

メスーゼラウォークは山の斜面を這うように、一人が歩くことが可能な細い道が続く。ブリッスルコーンパインの立ち枯れの木、一部枝をつけた木、松葉を繁らせる木が入り混じり植林を終えたばかりのように、脆い白い瓦礫の山肌にまばらに生えている。

木の近くに寄ることはできるが、足下は滑りやすく、脆い。谷間には松かさが川のように、風に吹き寄せられていた。雨の少ないここでは、松かさも腐敗することもなく、子孫を残すチャンスを待ち続けている。

実際どの木が4700才のメスーゼラか、わからない。コースから大きく外れることは、足場が悪いし、許されない。でも、目の前にブリッスルコーンパインの樹皮をはがれ、木質部分を剥きだし、よじれ、うねって,枯死したような幹から松葉を茂らせた枝が伸びる姿を見れば、これがメスーゼラだと思い込みたくなる。

ブリッスルコーンパインは寒さと強風、乾燥、高度に適応し、体の大部分を枯らしながらも生き延び、名前の由来のトゲのある松かさをわずか生き残っている枝に実らせる。年を経るに従い表皮が剥がれ、幹も、根っこも磨き上げたように艶やかに輝いている。生命の極限に感動せずにはいられない。

9月初めというのに、トレッキング中、出会ったのは2人だけだった。
案内所に戻ってくると、観光客は残っていなかった。青空の一部を覆っていた雲が灰色に変わり、突然小豆大の雹が降り始めた。2時間あまりエンジンを止めていたけれど、車の警告灯は相変わらず点灯している。予定では、さらに奥の未舗装の道路を走り、パトリアーチグローブの世界最大のブリッスルコーンパインを見に行くことにしていた。
昨日ヨセミテ国立公園の3000mの峠でも、突然の雪を経験してきた。ヨセミテは人も車も多く、公園施設も整っていたが、ここには案内所以外なにもない。地球の歩き方にも記載がない。レンタカーが故障をすれば、助けを求めることも困難かもしれない。私たちは、あきらめるより以外なかった。すぐ近くに行きながら世界最大のブリッスルコーンパインに会えない。残念であったと、同時にその環境が過酷なことを感ぜずにはいられなかった。

ビッグパインのガソリンスタンドで車を点検したが、原因は不明であった。町はすばらしい青空だった。その後、レッドウッド国立公園に向かう長時間のドライブ中、いつの間にか警告ランプは消え、二度と点くことはなかった。

 

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NORIKOさんは人生においても巨木においても私の大先輩です。
世界を股にかける行動派であり、巨樹についても、樹齢・幹周り・樹高・容積の世界4大巨樹全てに会っておられます(「
皆様からお送り頂いた巨樹写真」参照)。
スペインに語学研修のホームステイをされたり、巨樹に会うための海外旅行も、
業者を通さずにインターネットで現地の方と直接交渉されるそうです。

初めてお会いしたのは今春(2004年)の土岐市シデコブシ群生地でした。
その後、関西巨木オフ会でもお会いしましたが、何事に積極的でご一緒すると
楽しくなります。その時「大名草の乳房杉」でヤマヒルに噛まれたのが後で分
かったのですが、慌てることなく「きっと悪い血を吸ってくれるでしょう」とニコニコと
言われたプラス思考に感心したものです。
これからのお付き合いが楽しみです。               
                                         
花子

 


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