八月、桃の実が店頭にたくさん並ぶと必ず思い出すシーンがいくつかある。
秋に生まれた私のために両親が植えた桃の木(白桃)にまつわるものだ。
その当時は桜の植栽が今日ほど多くなくて、ふくいくたる桃色の花(実際には桃の花には香りはない)が春たけなわを教えてくれて晴れやかな気分になった。
桃の木の下で遊んだ「ままごと」の記憶も鮮やかだ。
桃の木は私の成長とともに大きくなって3〜4年で実をつけるようになったそうだ。

花が散って青い小さな実がある程度、大きくなると桃の実を鳥や風雨から守るための紙袋が必要なので幼かった私も母に習って古紙を張り合わせる作業を手伝った。
そして、その紙袋を未熟な実にかぶせるのは父の仕事であった。
こうして家族で丹精した桃の実を収穫する時のうれしさは今も忘れない。
もうそろそろ熟した実を収穫できそうな、夏休みのある日、みんなで出かけて帰宅した夕方、なんと驚くべき光景が目にとびこんだ。
紙袋をかけた桃の実が一つ残らずなくなっていたのだ。
この時の、がっかりした気持ちも心に残る鮮烈なシーンだ。
私が子どもの頃は飽食の今日とは違い、家庭果樹がもたらしてくれる甘味はとても貴重なものだった。
また、桃の葉にはアセモ、肌荒れの予防効果があるので青い葉を煮出してその煮汁とともに行水のたらいや浴槽に浮かべたりして利用した。
その青くて爽やかな桃の葉の香りが今もはっきりとよみがえる。
桃の木が大きくなるにつれ樹幹にひび割れが生じ、そこから松脂のようなベトつく樹脂が出て、虫がついたり服についたりと花の可愛らしさとは対照的な特徴も持っているが、美味しい実をたくさん実らせる大きなエネルギーを秘めた果樹である。
そのため樹齢が20数年というのもうなずける。
私が嫁いだ冬のある日、パワーを使い果たした思い出の桃の木は命を全うした。
<ミモザさん>
心温まる桃の思い出を寄せてくださったミモザさんは、ウェブサイト「Field
WorkJournal」のウェブマスターをしていらっしゃいます。
東京都心の身近な草・花・樹を紹介しているこのサイト、デザインセンスや知識も素晴らしく、また、都心の狭いエリアにこれだけの植物がいることに驚かされます。
Cafeのコーナーでは植物を使ったお菓子の作り方も掲載していて、この「日本の巨樹・巨木」の常連さんにも隠れファンがたくさんいます。
ご都合によりウェブサイトの更新はお休み中ですが、多くの常連さんがミモザさんの人柄を慕って訪れています。みなさんも、ぜひ訪れてみてください。
東京散歩 http://homepage3.nifty.com/tokyosanpo/
Juhske
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