木下のケヤキ

瀬川 英二

 

私のふるさとは信州伊那谷です。高校卒業まで過ごしましたが、40年前の当時は行動範囲も限られていて、ふるさとの事柄を(ましてや巨樹など)それほど多くは知りませんでした。詳しくなったのは東京で生活するようになって、しばらく経ってからです。父・母ともに彼岸の人となり、長男の私は墓守り役で年に数回家族を連れて帰郷します。昔は知らなかった峠や廃校となった分校などを巡って、ふるさとの自然と伝承文化を楽しむようになりました。「木下のケヤキ」もそんな中で出会ったのです。

伊那谷は諏訪湖を源にして遠州灘に注ぐ天竜川を中心線とし、東側の赤石山脈と西側の木曾山脈に挟まれた地域です。二つの山脈からの沢水を集めて大河に育ってゆく天竜川、それに沿ってコトコト走るJR飯田線の、木下駅近くにある保育園の庭にケヤキはゆったりと枝を広げています。

ご覧のように見事な根張りが大樹を支え、そこから上部へと円錐状に細くなっていますが、それでも目通り幹周は12.4mです。1000年という樹齢にふさわしく、ゴツゴツと表面が盛り上がった主幹は、そう高くない所から枝分かれし、その先は美しく扇状に広がっています。ケヤキは主幹が通直する樹種なのに、太く豊かに伸びた枝葉の自重で主幹が圧縮されているかのようです、それでいて樹高は25mあります。全体の重量感からくる迫力が私の巨樹好みには欠かせない要素ですが、この樹は迫力と美を兼ね備えているのです。

うれしいのは、この樹が地元の人々に親しまれているらしいことです。樹の周りには踏圧を和らげるウッドチップが敷かれているだけで、立ち入り禁止の柵はありません。その為、母親たちは自由に幼児を樹の下で遊ばせています。保育園の園児達が歓声をあげて樹の周りを駆け回っている姿も目に浮かびます。

下の写真は付近で偶然見つけたマンホールの蓋です。可愛いくデザインされたケヤキに、人々の愛着を感じて笑みをこぼしました。


<次回の指名>

Juhskeさん:東京都府中市にお住まいで、「City of Woods 杜の街 武蔵府中」と「東京の樹」というHPを出されています。地元をこよなく愛するJuhskeさんの姿勢には好感を持つ人も多い筈。HPに発表された“府中の名木百選”を頼りに、府中の木を巡った2年前は私の懐かしい思い出です、お世話になりました。

樹だけでなく、社会・スポーツに対する批評もHP中の日記に書かれていますが、一読の価値あり。こういう若者が全国にいれば、日本の地方分権も安心なんですが・・・・。





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